【書評】「大論争!哲学バトル」を読んで学んだこと!
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大論争哲学バトルー畠山創著
「大論争哲学バトル」の要点
2.実存が本質に先立つ(サルトル)
3.美的実存・倫理的実存・宗教的実存(キルケゴール)
4.諸法無我(釈迦)
「大論争哲学バトル」の書評
本書は殺人は絶対悪なのか、格差はどこまで認められるのか等の具体的な命題から自由は本当に必要なのか、生きる意味は何なのか等の抽象的な命題までの幅広い15個の問いについて様々な時代の哲学者を架空で議論させ結論を導くという書籍です。学問を志すにあたっては少々色物の本書ではありますが、哲学を学ぶきっかけとして、あるいは自分の軸・信念は何かについて探るにあたっては非常に適した書籍であると考えます。実際のところ本書を読了後、自分の思考が整理され、私は実存主義という思想に近い考えをもって日々生きているということを客観的に把握することができました。
本書において新たに学びになったのは上に箇条書きした5つの事項です。1の弁証法とは二つの矛盾・対立する立場(テーゼとアンチテーゼ)を総合することによって更に高い立場(ジンテーゼ)を導き出すという思考法です。もともと弁証法は理解していましたが、インターンを始め、ビジネスの現場に積極的に身を置き始めた現在感じるのは、子の弁証法とはPDCAの考え方の基礎となる思考法であるという事です。常により良い姿(ジンテーゼ)について考える意識は付加価値を追求するにあたって、体で覚えるべき事項であると感じます。
2の「実存が本質に先立つ」とは実存主義の思想を持つ哲学者サルトルの言葉です。その意味は、人間の本質はあらかじめ決められていないため人間は自ら世界を意味付け、行為を選び取り、自分自身で意味を生み出さなければいけないという事です。この考え方は個人の主体性よりも環境下のシステムが無意識に先行していることを主張する構造主義の考え方と衝突しますが、私はサルトルの実存主義に共感しました。
何か物事に熱中したり、忙殺されているような環境下では自分の行動の意味を理解せずに行動し、視野が狭くなる性質が人間にはあると私は感じるので、週に一度でも自分を見直し内省する機会をしっかりと設けようと思いました。
3の美的実存・倫理的実存・宗教的実存とは実存主義の思想を持つキルケゴールによる人間の実存には3段階あるとする主張です。内容を要約すると人間はまず快楽を追求し(美的実存)、次に義務や規範に従う生き方をとり(倫理的実存)、絶望を経て「単独者」として神の進行に生きる(宗教的実存)というものです。
私はキルケゴールのようにここまで強い思想は持ち合わせていませんが、自分自身に対する直接的な快楽ではなく、他者を幸福にすることで得られる快楽を得たいという欲求が強くあるので、美的実存からの脱却という点ではキルケゴールに共感致しました。共感にとどまらず日々の生活で他者に対する利益を意識したアクションを行いたいので、ビジネスに限らずそのような行為を模索していきます。
4の諸法無我とは仏教における考えで、あらゆるものは移り変わり世界に不変のものは無く、全ての生命は関連性のにおいて存在しているため、自分自身を世界の一部として考え他者との関係性の中で生きるべきだという考えです。これは先に触れた実存主義的な考えからは少し遠い思想ではありますが、他者との連関、すなわち他者がいて自分が存在できているという考えには共感しましたので、他者に対する感謝の念を忘れずに日々の行動を変えていきたいと思想云々ではなく純粋に感じました。
哲学を学ぶ際は思想集を読んだり、ある哲学者の著作を読んで学びを深めるのが王道かと存じますが、本書の様々な時代の哲学者を架空で議論させるというアプローチは稀有であり非常に先進的であったように思います。哲学についてあまり学んだことがない人に是非お勧めしたい一冊です。