【書評】「異邦人」を読んで学んだこと!
異邦人 ーアルバート・カミュ著
「異邦人」のあらすじ
-アルジェリアのアルジェに暮らす主人公ムルソーの元に、母の死を知らせる電報が、養老院から届く。母の葬式のために養老院を訪れたムルソーは、涙を流すどころか、特に感情を示さなかった。葬式の翌日、たまたま出会った旧知の女性と情事にふけるなど、普段と変わらない生活を送るが、ある日、友人レエモンのトラブルに巻き込まれ、アラブ人を射殺してしまう。ムルソーは逮捕され、裁判にかけられることになった。裁判では、母親が死んでからの普段と変わらない行動を問題視され、人間味のかけらもない冷酷な人間であると糾弾される。裁判の最後では、殺人の動機を「太陽が眩しかったから」と述べた。死刑を宣告されたムルソーは、懺悔を促す司祭を監獄から追い出し、死刑の際に人々から罵声を浴びせられることを人生最後の希望にする。
「異邦人」の要点
1.人間は自分の存在の意味を問い続けながら生きていかなくてはならない(実存主義)
2.思考停止して他者の作った意味にしがみついてはいけない
「異邦人」の書評
著者のアルバートカミュは第二次世界大戦時に活躍した作家で、この世界は「不条理」(実存主義の用語で、人生に意義を見出す望みがないことをいい、絶望的な状況、限界状況)に満ちているという実存主義的な思想を持っています。「異邦人」の主人公にあたるムルソーは正にカミュの分身ともいえる人物で、「不条理」というカミュの考え方を大きく反映しています。
本書において新たに学びになったのは上に箇条書きした2つの事項です。1についてですが、カミュの掲げる「不条理」という概念はかなりネガティブに聞こえます。しかし実際はその逆であり、人間存在の意味はそもそも無いため自分自身で意味を問い続けていかなければならないという考え方です。私はカミュの思想の「人間存在の意味は無い」という部分には賛同しかねますが、「自分の存在の意味を問い続ける」という部分には共感しており、私が内省によって得た自分の考え方と哲学者カミュとの思想の間に共通する部分があることが分かったことは大きな収穫でした。今後は実存主義の哲学家の思想を読書などを通じて吸収し、自分の考え方を昇華させていきたいと考えます。
2については、一般的な人間の感情を持たずに自分の欲望に従って生きる人物であるムルソーは、殺人の罪を審議する裁判において、他者から見た自身の人間味の無さによって死刑を求刑されてしまいます。このシーンを通じたカミュのメッセージは「思考停止して他者の作った意味にしがみついてはいけない」ということだと感じます。この考えについても先に述べた実存主義の観点から私は共感できました。
小説という形態によるところにより表現の過激さは否めませんが、カミュの実存主義的思考について部分的に共感し、もっと深く知識を深めていきたいと感じたので、既に購入しているカミュの「ペスト」という作品についても以後書評を残していきたいと思います。